~確かな志を心に刻んで~
校長 渡辺 康弘
昭和50年4月に大玉中学校として開校以来,第42回目の卒業生となられた80名の皆さん,卒業おめでとう。心からお祝い申し上げます。
皆さんは,平成26年4月に入学以来,6年前に発生した東日本大震災からの復興の歩みが進む社会の中で,これからの大玉中学校の創造に向けて,そして,ふくしまの復興の担い手となるべく,その基盤となる人間としての生き方を日々追求してきたことと思います。卒業というこの節目の時に,「これからどんな人間になろうとしているのか」と自分自身に問いかけ,確かな志を心に刻んでほしいと願います。
今,卒業証書を手にした瞬間の一人ひとりの決意に満ちた表情を見て,私は胸が熱くなりました。昨年4月の初めての出会いの日から,皆さんは少し照れながらもいつも明るく人なつこく,様々な場面で私の心の中に素敵な印象を残してくれました。授業や部活動,各種大会での真剣なまなざしと修学旅行や体育大会などで見せた満面の笑みは,まさに今を生きる青春の象徴でした。あだたら祭における各学級の心と心をつないだ合唱とユーモアの中にも先生方への感謝の気持ちがこめられたステージ発表,そして当日皆さんのほほを伝わった涙は,将来にわたりつながっていくであろう仲間との絆の象徴でした。校長室での会食で,将来の夢を語る皆さんの姿から,私は,失いかけていた挑戦への新たな勇気をもらいました。そして冬が来て,進路目標の実現に向けて努力する引き締まった表情は,試練に立ち向かうたくましい姿でもありました。できることならば時間を戻してそれぞれの瞬間で得た感動をもう一度確かめたくなるものばかりです。
皆さんがこの学校で過ごした3年間の様々な日々,うまくいったことも失敗したことも全て無駄ではなかったと信じています。そして皆さんは確かな成長を遂げました。どうか自信を持って力強い第一歩を,この母校から踏み出して行きなさい。
卒業生の皆さん,いよいよお別れです。3年間の中学校生活を力と誇りにして,勇気を翼にこめて,希望の風に乗り,自分の志に向けて歩き出しなさい。そしていつまでも命を大切にして下さい。
~夢~
新年明けましておめでとうございます。
大玉中学校の全校生241名と全教職員29名が,無事に新しい年を迎えたられたことを喜びたいと思います。
今日は,最初に小学6年生の作文を紹介します。
ぼくの夢 この六年間で一番思い出に残ったことはテニスで日本一になったことです。練習で一生懸命やった結果が出たと思います。 全国選抜や全国小学生大会,全日本ジュニアの三つの試合で優勝しました。 一試合一試合を「絶対勝つぞ」と思ってやりました。そして「優勝」までいけた時は,すごくうれしかったです。 ぼくはテニスのラリーが長く激しく続くところが好きです。いろいろなコースに打ちわけ,深く打ったり短く打ったりします。チャンスボールがきた時,強いボールを打つのが好きです。決まった特はすごく気持ちがいいです。このショットがいつも打てるように練習していきたいです。 試合に出ることで友達が増えました。友達が増えたおかげでいろいろな話をしたりいっしょに練習したりできます。それもテニスが好きな一つです。 これからはだれにも負けないように,苦しい練習も絶対あきらめずに全力でとりくんでいこうと思います。 夢は世界チャンピオンになることです。夢に向かって一歩一歩がんばっていきます。 松江市立乃木小学校6年 錦織 圭 |
錦織選手のように,世界で戦う日本人のスポーツ選手は沢山います。それらの選手に共通することは,小学生の時点で将来の目標を掲げ,それを常に意識し,そして作文に書けるほどに明確に持っていたということがあります。夢や目標は,紙に書くことが叶うための第一歩であると言われていますが,書くだけで目標が叶うのではなく,書かずにはいられないほどの目標・夢だからこそどんなに辛い練習でも諦めずに頑張り抜き,叶えることができたのだと思います。
皆さんの中には自分の将来の夢を,作文に書けるほど明確に持っている人はどのくらいいるでしょうか。将来の夢をイメージできない人は,現時点で興味のある職業を探し出してみて下さい。具体的な夢を持っている人は,その職業がどのような職種の人々と結び付いてるのかを確認してみて下さい。そして,1,2年生は,できるだけ早く,夢を実現するため,残された中学校生活における目標を立て,いつまでに達成すべきかという近未来予想図を,3年生は,高校の入学式までに,高校3年間で,その夢に近づくための果たすべき目標を記した未来予想図を描いてほしいと思います。夢は人を前向きに変える力があります。勉強や部活動に対するやる気を引き出す力があります。
最後に私が好きなクラーク博士の言葉を紹介します。
「 Boys, be ambitious.(少年よ大志を抱け)」
3年生は44日間,1・2年生は51日間という短い三学期ですが,241名全員が夢を抱き,その実現を目指し頑張りましょう。
~風~
私が選ぶ大玉中学校の今年の漢字は「風」です。
今年4月に,9名の先生方と,78名の新入生が大玉中学校にやってきました。皆さんは,本校に新しい「風」,まさに新風を吹き込んでくれました。掲示物が整理され,ホワイトボードの掲示板に変わり,廊下には花や鉢植えが飾られ校舎が明るくなりました。部活動においても,陸上部では1年生が即戦力として活躍し,県大会出場への追い「風」となりました。新人戦では,上位進出を果たした部が相次ぎました。
学校行事にも「風」が吹きました。東日本大震災後,原発事故の放射能という逆風により,実施されなくなった収穫祭が6年ぶりに復活しました。おおたま・オータム・フェスタでは,写生会と安達太良登山が35年ぶりに,あだたら健康マラソンでは,全校生が走る校内マラソン大会が28年ぶりに復活しました。授業の数を確保するために削減され続けた,地域の良さを発見したり,向かい「風」に堪え,辛さに打ち克って達成感を得ることのできる学校行事が,土曜授業という新しい「風」で戻ってきました。
生徒会活動でも新風が吹きました。10月に選出された新生徒会執行部は,3年生の旧生徒会役員の思いを引き継ぎ,スローガンと具体的なマニフェストを全校生に明示しました。監査委員は毎月,その達成状況をしっかりと見守り,提言を発表しています。この「学校自治」の精神は,今後もしっかりと持ち続けてほしいと思います。
さて、明日からは冬休みとなりますが、この休みは年末年始を含む特別な行事や家族で過ごす時間が特に多い休みとなります。しかし,足下はしっかりと固め,既に立ててある一人ひとりの冬休みの目標が達成できるよう努力しなさい。
皆さんは「春一番」という風を知っていますか。毎年2月4日前後の立春の後,最初に吹く強い南風を「春一番」と呼んでいます。3年生はこの風が吹くまでが勝負となります。「春一番」を追い風に受験という頂を乗り越えることができるよう,一日一日を歯を食いしばって頑張りなさい。
1,2年生は,今年の中学校生活を振り返り,家族とともに,1年の成果と課題を確かめる団らんの時間をとりましょう。さらに,生活のリズムを壊すことなく,毎日7時間の睡眠と3時間の自主学習を継続しましょう。1月10日,「よしやるぞ!」と前向きで,意欲に満ちた皆さん方と会えることを楽しみにしています。
~豊かで平和な国,「日本」を再確認した出来事~
今年の夏の最大の話題は,リオデジャネイロオリンピックではないでしょうか。私はその中の一つの銅メダルに勇気づけられるとともに,改めて豊かで平和な国である日本の素晴らしさを感じることができました。
その銅メダルを獲得したのがこの羽根田卓也選手です。羽根田選手はカヌー・スラロームの男子カナディアンシングルで,カヌー競技では日本人初のオリンピックのメダリストとなりました。カヌー・スラローム競技の国際大会は,コンピュータ制御で水流を発生させる人工のコースで開催されます。しかし,日本国内にはこの競技専用のコースはありません。そのため,この競技でオリンピックのメダリストとなるべく,高校卒業後に,ヨーロッパのカヌー強豪国スロバキアに渡り,海外の人工コースで競技の腕を磨いたのです。そして苦節10年,三度目のオリンピックで見事夢を叶えました。
さて、私が皆さんに伝えたいのは,羽根田選手の勇気や努力ばかりではありません。オリンピックに参加した数多くの国では,国内での競技環境に恵まれず,羽根田選手のように国外に出て競技生活を続けている選手が少なくありません。日本は戦後,見事な復興をとげ,経済的にも豊かで平和な国となりました。環境が許せば,日本国内にいて,ほとんどの種目において,オリンピック選手やプロの選手を目指すことができます。自分が希望する職業に就くことも可能です。しかし,日本のような恵まれた環境の国は,世界の中でも稀であることを実感してほしいのです。
3年生にとって二学期は「勝負の学期」にしてほしいと思います。努力によって自分の夢を実現できる,豊かで平和な日本に生まれてきたことを感謝し,自分との,そしてライバルとの「進路実現」という勝負に競り勝つことができるよう,日々精進して下さい。二学期の努力が三学期の勝敗を決します。
1・2年生にとって二学期は「立志の学期」にしてほしいと思います。まだ漠然としている将来の夢を徐々に明確なものとできるよう,授業や部活動,さらには様々な体験活動に前向きに,そして真摯に取り組んで下さい。夢なき者には理想も,計画も,実行も,そして成功もありません。
この二学期が,ここにいる全員にとって実り多い学期となるよう,先生たちは皆さんが挑戦することを応援し,手助けをしたいと思っています。一緒にすばらしい学校生活を創っていきましょう。
「大人になる学校」で心に刻んでほしい三つの文字
校長 渡辺 康弘
小学校と中学校はどこが違うのでしょうか。
中学校というところは、大人になる学校なのです。小学校は子どもの学校、中学校は、今は子どもですけれど、大人になる学校なのです。何か違いがあるのでなかったら、小学校を卒業して、中学校に入学し直さなくても、小学校に九年間いればよいわけです。中学校は大人になる学校、従って大人になっておかしなことは、全部やめてもらうところです。三年間のうちに一人前の大人としておかしくないことを身につけるのです。
自分でできる事は、できるだけ他の人の手助けを受けないでできるようにすることです。また、社会では通用しないマナーやルール違反は学校でも通用しないということを学んでいくことも大切なことです。
みなさんに三つの文字を贈ります。是非心に刻んで下さい。
一つ目は「夢」です。大玉村と大玉中学校の教育スローガンの両方にこの「夢」という漢字が使われています。村のスローガンは「夢を育てる教育~おおたまに学び、世界とつながる人間の育成~」。大玉中のスローガンは「将来に夢を抱き、実現に向けてひたむきに努力する生徒」。まずは自分の夢を明確にし、その実現に向かって悔いのない3年間を過ごしてください。
二つ目は鍛錬の「鍛」、鍛えるという文字です。中学校では、「教えてもらう」から「自ら学ぶ」へと変わらなければなりません。授業でも家庭学習でも部活動でも、与えられるのを待っていては、前に進むことはできません。難しくても、つらくても、やるべき事をやらねばなりません。自分を甘やかさず、常に厳しく、継続することが「鍛える」ということです。やる気がでないときや調子が悪いときでも、毎日同じ事を「必ずやる」。それが自分を鍛え成長させます。
三つ目は「美」、美しいという文字です。「日本で最も美しい村」大玉村の中学生として、校内・村内の美化作業・清掃活動など目に見える美しさのために汗を流すことはもちろん、目には見えない美しさ、丁寧な言葉遣いや友だちに対する思いやり、明るく心のこもった挨拶など、「こころの美しさ」を磨いてください。
11月26日,大玉村学校支援地域本部の仲立ちで,玉井在住の鈴木英雄さんが来校され,家庭科の調理実習などで使用するステンレス包丁20本を研いでいただきました。
3年前からボランティアとして村の構造改善センターや保健センター,総合福祉センターさくら,フレンドリー大玉の厨房で使用している包丁の手入れもなさってきたそうです。ここ何年間も研がれることなく使われてきた本校の包丁は,刃先が丸まってしまったものや刃こぼれのあるもの,さらには刃が波打っているものなど,切れ味を取り戻すには容易ではない包丁がたくさんありました。
このような包丁を,鈴木さんは四種類の砥石を使い分け一本一本時間をかけて,丁寧に磨いてくれました。昼食をはさんで約6時間,丸一日がかりで20本の包丁は,どれもが,手に持った一枚の紙を力を入れずに裁断できるまで切れ味を取り戻しました。今後の調理実習ではより手際のよい作業ができそうです。鈴木さん,ありがとうございました。
大玉村海外交流事業「友好の翼」報告会が,26日夜,保健センターで開催されました。
教育長さん,村長さんの挨拶の後,来賓の遠藤村議会議長さん,鈴木国内外交流推進会副会長さんから祝辞を頂戴しました。その後,いよいよ報告会のメインである「団員報告」の時間になりました。生徒全員が役割分担をして,旅行行程に沿って,楽しかった研修の様子を,時にはユーモアをまじえながら説明しました。投影される写真を見ながら,私を含めた,参加者にとっては「夏の思い出」を振り返る時間にもなりました。
最後に,私から以下の話をさせていただきました。
この研修の詳細につきましては,二学期のはじめ,学校だよりに「友好の翼」旅行記と題して6回に分けて連載させていただきました。その理由は当初の申し込みが予想よりも少なかったことが挙げられます。この研修旅行の充実した内容を今の1年生とその保護者に知らせ,次年度は定数を上回る申し込みがあることを願ってのことでした。ある一年生の担任からは「どうしたら台湾に行けるのですか?」と旅行記を目にした生徒から質問があったと聞き,少しは手応えがあったのかなと感じています。今回の研修で,参加した生徒がいかにたくさんのことを学ぶことができたかについては,今日の発表と「報告書」の作文から十分に伺い知ることができます。では,生徒たちが一番印象に残ったものは何かと思い,すべての生徒の作文に目を通し,記載されている訪問先や印象に残った出来事の統計を取りました。第3位は6名の作文で紹介された「十分」です。天燈と呼ばれる大きな風船(というよりは小型の気球)に墨で願い事をしるし,大空へ飛ばした体験が印象的だったようです。第2位は9名で「九份」。映画「千と千尋の神隠し」の世界観たっぷりのたくさんのお店が連なる路地を自由に散策し,ショッピングを楽しみました。では,第1位は何だったでしょうか?村長さん,教育長さん,「安心して下さい。彼らはちゃんと目的を果たしましたよ。」第1位は10名が作文の中で触れている「大竹中学での交流会」でした。
私は大玉村教育委員会のスローガンが大好きです。そのスローガンとは「夢を育てる教育~おおたまに学び,世界とつながる人間の育成~」。このスローガンを具体的に実現しているのが今回の「友好の翼」ではないでしょうか。「百聞は一見にしかず」。台湾到着直後に感じた熱帯特有の湿気を含んだ生暖かい空気。至近距離で目にした台湾の至宝「翠玉白菜」の鮮やかな色彩。九份や士林夜市で鼻についた飲食店の独特の臭い。名物マンゴーかき氷の口の中で消えていく氷の何ともいわれぬ食感。そして優しい台湾の生徒達との交流…生徒達はまさに五感で世界とつながりました。これからも多くの大玉中生に同様の体験をさせたいものだと思います。ここで,生徒の皆さんにお願いがあります。今回取得したパスポートは5年間の有効期限があります。高校を卒業してから少しの間ですが使うことができます。それまでの期間にぜひ,もう一度今回のパスポートを利用して,できれば自分で貯めたお金で海外へ出かける目標を持って下さい。十代にもう一度「世界とつながる」経験ができれば素敵な事だと思います。
最後になりましたが,生徒のみならず私たち引率の教師にまで貴重な研修の機会を与えて下さった,村長さん,教育長さん,神野藤さんをはじめとする大玉村当局の皆様方に改めて御礼を申し上ます。ありがとうございました。
友好の翼」生徒が印象に残ったことベスト8
○ 第1位:大竹中学校との交流(10名)…対面前の緊張感,そして台湾の中学生の優しさに触れる
○ 第2位:九份(9名):「千と千尋の神隠し」の世界でショッピングを楽しむ
○ 第3位:十分(6名):願い事を書いた天燈(大きな紙風船)飛ばし体験に感動する
○ 第4位:士林夜市(5名):夜店が連なる歓楽街でショッピングとマンゴープリンを満喫する
○ 第5位:台湾の料理(4名):創造していたよりも食べやすく,高級食材も口にする。
○ 第5位:故宮博物院(4名):行列をつくる台湾の至宝,「翠玉白菜」は特に印象に残った様子
○ 第7位:飛行機内(3名):荒天で到着が遅れたが,機内ではゲームを楽しむ
○ 第8位:台北101(2名):超高層ビルの展望台から台北の夜景に感動する
○ 第8位:龍山寺(2名):同じ仏教の寺院でも,お参りの仕方など日本との風習の違いを実感する
各新聞紙上で恒例となっている「今年の10大ニュース」やユーキャン「新語・流行語大賞」など,日本には,その年の世相を振り返る恒例行事があります。その中の一つに日本漢字能力検定協会の「今年の漢字」があります。「今年の漢字」は,1995年から漢字の持つ素晴らしさや奥深い意義を伝えるための啓発活動の一環として始まりました。毎年年末に一年の世相を表す漢字一字を全国から募集しています。そして、最も応募数の多い漢字を12月12日(いい字一字)の「漢字の日」にちなんで、京都・清水寺で発表しています。今年は20周年を迎えます。
私も,毎年この時期,自分自身と自分が勤務する学校の「今年の漢字」を考えています。
私自身の今年の漢字は「帰」としました。私は,ここに来る前の3年間は,会津の小学校に,その前3年間は福島市の教育委員会に勤務していました。この一文字には,7年ぶりに中学校の現場で働くことのできた喜びも込められています。
私が選んだ大玉中の今年の漢字は「誇」です。創立40周年を経た本校の確かな足跡と先人の努力,そして生徒が歌う校歌のすばらしさに本校で勤務することのできる気持ちも込めて決めました。
さて,皆さん自身の,そして家族の「今年の漢字」は何を選びますか?今年一年の自分自身の足跡を振り返る上で,親子で考えてみてはいかがでしょうか。
過去5年間の「今年の漢字」一覧
○2014年「税」:消費税率が17年ぶりに引き上げ
○2013年「輪」:2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定
○2012年「金」:ロンドンオリンピックの活躍,スカイツリー開業等
○2011年「絆」:東日本大震災,W杯なでしこ優勝
○2010年「暑」:記録的な夏の「猛暑」,チリ鉱山事故